理科

 どうも、人畜無害なブログを書き続けています。奇を衒った基地外めいた記事より、もっと日記のような朴訥とした記事を淡々と書き続けている方が好感が持てるという、裏の裏を書いたようなことを言われたこともあります。
 理科の授業は、昔から好きでした。おそらく、遺伝子的に理系なんだと思いますが、中学校の先生にも恵まれたのも大きいと思います。別に、中学校の理科の先生は、でんじろうのように面白い実験を授業で繰り広げていたわけではありません。むしろ、講義にひたすら徹していました。教科書をほとんど使わず、体系的に整理された板書を無言で黒板に書き、みんなが概ね書ききったら説明を始めるというスタイルの授業でした。当時の先生にありがちな、板書をしながら説明をするので、生徒は板書の書き写しと説明の聴講というダブルワークをする羽目になり、結局何の話だったのかよく分からないという問題が回避される斬新なやり方でした。そして、一通り説明を終えたら、簡単な練習問題を刷ったプリントを配り、一定の時間を与えて解いたあと、一人ひとり順番に当てて答えを言わせ、みんなで答え合わせをする、というスタイルでした。なお、問題を解くスピードは個人差があるので、早くできた人は他の問題を解いたり、他の科目の内職をしたりしてもOKという待遇でした。今こうして思い返しても、公立中学校の授業とは思えないほど、洗練されていて無駄がない授業でした。

 

 中1と中3のときは上述の先生のお世話になりました。中学一年のころ、「裸子植物」の「裸」という字を、ころもへんではなくしめすへんで書いてしまい、部分点ではなく、全部減点されるということに腹を立てました。先生は「国語の授業ではないので、間違えた字は減点するが平仮名だったら減点しない」というので、その言葉を真に受け、解答用紙に書く文字は、自分の名前以外はすべて平仮名、片仮名、記号、算用数字に絞るという対策を練ることで徹底抗戦しました。それで、テストの点数は常に96点以上だったのだから、なかなかエキセントリックな生徒に見えたことでしょう。中3は流石に受験もあるし、まあ大人気なかろうということで、真面目に漢字も書きましたが。

 そんなわけで理科の通知票の成績は、その先生が担当のときは、常に10段階評価の10でした。中2のときは、相性の合わない先生になり、9が付けられたことがありました。ちなみに、国語、数学、社会の三科目では、三年間を通しすべて10でした。保健体育を除くすべての科目で、最低一回は10を取ったことがあることになります(なんと、「音楽」も!)。田舎の学校だったので、井の中の蛙、お山の大将でしたが、それでも、一目置かれていたのは客観的事実としてありました。

 

 そういうわけで、僕のなんとなく理系という方向性が定まったのは、この先生の影響もあったことでしょう。そして、高校では、物理の先生に惚れ込むことになります。この先生は時々面白い実験を授業内でしてくれましたが、やはり授業にこの先生の真髄は詰まっています。まるで予備校の先生のようなどっしりとした構え方。それでいながら、予備校の先生のように自分を崇めさせようとはしない。この先生の教え方のすごい点は、どんな問題でもシステマティックに定石にまとめてしまうところ。どうやって解けばいいのだろう、ではなく、必ずこうすれば解けるという形にまとめてくれるのです。三年間で習った物理のすべての分野の公式と定石を合わせわずか6枚の紙にまとめてしまうという神業の持ち主でもあります。独創的だったり、あるいは喩えが秀逸だったり、ありとあらゆる手段を用いて、生徒を魅了していました。さらに、驚嘆すべきは、夕方に希望者講習をやってくれるのみならず、部活で出られない人のため早朝7時にも同じ講習を開講し、最近ではそれも見られない人のため、YouTubeに自分の講習を上げているという点です。公立高校ですよ?!

 

 インターネットではなにかと叩かれがちな学校の先生ですが、振り返ってみると、かなり尊敬できる先生に出会うことが多かったと思います。おそらく上記の二人は、僕の人生で会った尊敬する人ベスト10に入っています。

キーリ

 高校の頃は月に2冊くらいのペースでラノベを読んでいました。僕の青春を構成しているものの一つに電撃文庫があると言っても過言ではありません。そのラノベの供給元は、概ね学校の図書室と駅の本屋の立ち読みに限られていました。フリーライド万歳です。今のネットなら叩かれていたでしょう。特に、学校の図書室は借りることを想定されているシステムだからともかく、駅の本屋の立ち読みは褒められた行為とは言えないでしょう。なんせほぼ毎日20分、ライトノベルを前日の続きから読んでいたのですから、よく叩き出されなかったものです。ただ、田舎者の僕は駅からのバスがなかったのです。仕方なく本屋で時間を潰していたのです。その点は許してほしいと思います。

 

 さて、その中でも、やはり心に残るライトノベルというのは何点かあるもので、そのうちの一つが壁井ユカコの『キーリ』でした。『キーリ』は、主人公の少女キーリと、「核」を埋め込まれ不死人となったハーヴェイ、それにラジオに憑依した霊の兵長が3人(2人+1台?)で旅する物語。戦争で荒廃し、発展した科学技術を失った世界を舞台としています。「核」は、戦前の技術を後世に伝える貴重な化石燃料かつ資料で、これを巡って様々な物語が繰り広げられます。ライトノベルにしては比較的珍しく、色気もなく辛うじて主人公は少女であるものの、全体としては土臭く鉄臭い灰色の雰囲気が漂っている小説です。というか、昔のラノベって、わりとそんな感じだった気がするんですけどね。今のラノベってだいたい異世界でハーレムになるじゃないですか。まあ、それもそれでいいと思うんですけど、当時のようなまだ方向性が定まっていない頃に書かれた、大衆小説との峻別が難しいようなライトノベルも面白かったんですけどねえ。

 

 鉄臭い雰囲気とか土臭い雰囲気って実はすごく好きなんですよ。僕が着ぐるみフェチであるということは、ゼロが自然数であることよりも有名ですが、もう一つ僕の地味なフェチとして廃墟があります。と言っても、別に廃墟でシコったり廃墟を被って股間に電マを当てたりしているわけではないのですが。廃墟はいいです。人工物が朽ちていき自然と同化していく過程で、ものは土臭くそして鉄臭くなっていきます。なにより、そこに人の営みがあったということ、そしてそこで再び人の営みが灯ることはないのだろうという不可逆性、すなわち無常観を突きつけられ、どうしようもなく込み上げてくるものが好きなのです。別に廃墟なんか見なくたって、自身が社会人になってしまったという現実を目の当たりにするだけで、吐き気がするほど人生の不可逆性と無常観を考えさせられますが。とにかく、廃墟が好きなのです。中学の頃の卒業発表は軍艦島*1だったほどです。M1のときに、世界遺産となった軍艦島に上陸するツアーに参加し、かくして8年前の夢を叶え、伏線を回収したのでした。ところで、廃墟好きの間で有名なサイトの一つに「廃墟デフレスパイラル」というところがあるのですが、あのどざいさんも愛読していたと知って、奇妙な由縁を感じたのでした。あのどざいさんが、着ぐるみ芸人としてでもピン大生としてでも優秀なサポートとしてでもなく、一サイトの読者として登場させられるのは、おそらく世界初でしょう。

 

 さて、翻ってキーリの話。『キーリ』は、そんな荒廃した世界を舞台に、主人公達が旅をする物語でもあります。旅をするライトノベルと言えば、ほかに『キノの旅』も有名です。夜は野宿をしたり、見知らぬ街の宿に泊まったりするのです。旅をする創作作品というのは、これはもう数え切れないほどあるのでしょう。ただ、現実の世の中に旅をしている人なんてそうそういません。みんな安住の地を約束されながら、学校や会社を行き来する数学的帰納法のような毎日を送っているのです。僕は、旅というのに憧れました。初めて、長い旅行をしたというのは、おそらく大学二年の夏だったと思います。夏休みの天文部の合宿に、フォロワーさんに会いに行く東京遠征をくっつけて、7泊8日ほどの日程の旅行をしました。旅行もこれほどの日程ともなると、途中で衣類を洗濯せざるを得ず、コインランドリーを求めて右往左往したものでした。で、コインランドリーの存在と使い方を覚えてからは、「おお、これは無限に家に帰らなくてもいいんじゃね」と思うようになりました。ジプシーとして、定住地を持たず、21世紀の松尾芭蕉として生きていく、そんな道にも憧れました。もちろんそんなことはなく、予定通りの日に帰路についたわけですが。ただ、今でもたまに遠方から学生が遊びに来て「いつ帰るの?」と聞いて、「いつでも」とか「まあ最長今週いっぱいは適当に」みたいな答えが返ってくると、「ああ、旅してるな」と思うわけです。アウトドアで活動的と思われてる僕でも、やっぱり安住の地である家を持っているというのは大きく、何だかんだで旅なんかに出るより、家に帰ってるほうが安心する性質なのですが、それでも、というか、だからこそ、旅に出るのに憧れるのかもしれません。

*1:長崎県端島のこと。かつては炭鉱で栄え、小さな島に人口5000人を誇る高密度都市として発展したが、閉山により島全体が廃墟になった。潮風にさらされ、かつての賑わいを決して取り戻すことはないという烙印を押されながら、無骨にして荘厳なかつての栄光を偲ばせるのに十分なコンクリート建造物が林立する。

クスノキ

 今年のNF*1はなんとあのニコテラ *2がステージから落選してしまったようで、クスノキ*3の前で例年やっている「踊ってみた」をやるそうです。いやはや、ニコニコ動画自体が斜陽化していて(現に僕もほとんど見ていない)、年々ニコテラのネタが分かんなくなってきているとはいえ、それでも腐っても鯛で、あれはNFの風物詩だと思っていました。吉田を後にして4年目。遠い京の街で行われているイベントとはいえ、やはり僕の骨となり血となっているものの一つは京都大学のあの吉田キャンパスであることは間違いないでしょう。半ばオフ会のような学祭の最後のトリを飾るのは、ステージのニコテラだと思っていました。あれ、落選とかあるんですね。社畜と化した僕は、見事にNFの時期に土日出勤を入れられ、行くことすらできなくなってしまいました。

 

 さて、クスノキというのは京大生にとっては、やはりシンボルでしょう。キャンパスライフなどという想像上の産物でしかないものを思い浮かべるほどエネルギー準位が高かった時期には、クスノキの下で友人とお弁当を広げながら談笑するような様子を夢見たものでした。実際、本物のリア充はそのような光景を繰り広げ、我々にきらきらした何かを見せつけてくれたりもします。

 

 夕方になったりすると、有象無象のサークルがクスノキの前で、何やら楽しげに遊んでいました。あるものはダンスしたり、あるものは大縄のダブルダッチをしたり、あるものはこたつを広げ鍋をしたり。いいですね。鍋ですよ。それもクスノキの下の屋外で。火気の使用も特に禁じられていなかったか、禁じたところで誰も守らなかったのでしょう。自由の学風。自由……ああ、いい言葉ですね。射精しそうなほど素晴らしい響きを持つ言葉です。

 

 我々はあの頃自由でした。空が青いだけで、無敵になれたのでした。大気のレイリー散乱という自然現象で勝利感を得ていたのですから、よほど幸せだったか頭がお花畑だったか、さもなくばカビでも生えていたかまあそんなところでしょう。今はどうでしょう。爽やかな秋の風を肌に浴び、向かう場所はと言うと、TOKIOが建てたほうがまだマシだというほど、倒壊寸前の社屋を持つ会社で、ドブネズミのように働くしかできないのです。爽やかな秋の風は、アミン系の薬品の香りを運んできてくれ、労働の悦びを噛み締めさせてくれます。爽やかな秋の風だったらまだいい方で、今日とかクッソ寒かったからな。今頃、クスノキの下では自由な光景が広がっていることでしょう。

 

 心にいつもクスノキを。

*1:京大の学祭。November Festivalの頭文字。

*2:ニコニコダンステラミックス。ニコニコ動画にゆかりのある曲やネタでダンスを披露する有志の団体。毎回趣向を凝らしてあり、グラウンドのステージイベントのトリを務めていた。

*3:京大の正門前に鎮座する大樹。

ブログ

 いや、うっかりブログを書くつもりが、ルパさん*1のツイートの画像を遡ってしまい、むらむらが抑えきれず、つい一発抜いてしまいました。
 一昔前はブログ、もっと昔はホームページでした。インターネット老人会に所属している僕も例外ではなく、かつてはホームページで着ぐるみの画像を探していました。そして活動の場はブログへと移り、今はツイッターになってしまったのでした。着ぐるみをやっている"中の人"とはコンタクトが取りやすくなりましたが、かえって着ぐるみの画像は探しにくくなってしまいましたね。
 さて、今日は、そんな"一昔前"のブログの話。一昔前と言っても、今でもブログをやっていらっしゃる方は沢山います。もちろん僕もその一人。あなたが読んでいるこのブログも現役で動いているブログの一つです。

 

 僕がブログを始めたきっかけになっているのは、笹松しいたけ*2御大です。山陰の田舎のタコ部屋に追いやられ、精神がおかしくなった彼の書くブログは、一部ではヤクでもキメているのではないかと囁かれるほどキチガイめいたものでした。端的に言って面白い。どんたけ膣内射精したいんだよ。こちとら女の子のお面を被って全身をタイツで覆って、そしてそのタイツが汚れないようにコンドームをちゃんと着けて、その中で射精してるのに。女の子のふりしながら射精するの最高だな? 

 あんなに面白い文章が書けるなら、笹松氏はきっとプロブロガーになれるでしょう。アフィリエイトでがっぽがぽです。ところが、現実はどういうことでしょう。前職を逃げるように退職し、定番の退職エントリを書いたものの、その後もどうやら雇われ人をやっているようです。すなわち、資本主義の犬というカルマを捨てられなかったのです。あんなに面白い文章を書くのに。僕は、今の会社を退職し、プロブロガーとして食べていく夢を諦めました。嘘です。そんな夢は端から抱いてないです。

 

 僕に影響を受けてブログを始めた一人がどざいさん*3です。つまり、笹松氏の孫弟子に当たります。お互い「知らんがな」って言ってるでしょう。どざいさんのブログもなかなかキチガイめいていて素敵です。なんたって彼のブログには、女の子のお面を被ったおっさんに電マを当てる種族が登場しますからね。彼の世を忍ぶ仮の姿は大学生ですが、本職は芸人です。芸人っていうか漫談家でしょうか。軽妙な語り口調と皮肉で紡がれていく自嘲と攻撃の交じった文章には、感服するばかりです。てか、俺、普通に負けてるよな? わりと、悔しくなってきたぞ。いよいよ、僕が彼に勝てるのは、着ぐるみの操演だけになってきました。あと、彼、めっちゃ気が利くしな。自己犠牲半端ない。僕は、心の中で彼にノーベル平和賞を差し上げています。あんまり褒めると、彼は困ってしまうので(江頭2:50的な)、この辺にしときます。

 

 はてなブログをやってると、よく知らない人がたまに読者になってみたりもするのですが、その中で一際、というほどではないですが、0.5 際ほど輝くブログを書く方が居られまして、それがこのMedapani Blogなのですが、日常のほんの些細な出来事を斜めから切り込むこれぞブログの王道という感じで、全体に漂うシニカルな香りが一時期癖になって読んでました。最近はあまり更新されていないですね。なんか最新の記事あたりに「最近疲れた」みたいなことを書き出してから、極端に更新頻度が落ちて、心配してます。誰か知らないですけど。いや、ひょっとしたら知ってる人かもしれません。だったらすいません。非正規労働者ということを時折ネタにされていますが、重いですね。正規労働者として働けている自分の境遇と雇ってくれている会社に圧倒的感謝です。頑張ってください。僕も頑張ります。間違っても退職してプロブロガーなんかになってはいけません。

*1:着ぐるみ界の彗星。Twitter アカウントは@lupa____。エロ可愛い「家畜ちゃん」は、各所に衝撃を与えた。

*2:僕の最古のフォロワーの一人。ブログは新スクの淵から

*3:着ぐるみ界隈の一人。いつもサポートでお世話になっている。ブログはどざいのマニエル 。

豆腐

 ここ一ヶ月ですっかりメンタルが豆腐になりました。ちなみに、今日の晩ごはんは麻婆豆腐です。丸美屋の麻婆豆腐あんまり美味しくない。
 原因を克明に記す趣味はないのですが、一言で言うと職場です。ていうか、職場以外にストレッサーなんかあるかよ。7 月あたりからなんか暗雲立ち込めてるよなあと思いつつ、ずるずるとやってきたのですが、不安定だったジェンガにとどめを刺したかのごとく、10 月に入ってから、崩れたのでした。うつ病の走りみたいな症状が出てきて、これは遅かれ早かれ精神科の病院にかかるべきなのでは、というようなところまで来ました。具体的には次のような具合です。もともと注意力はない方だったが、注意散漫になってはいけない場面で集中力が途切れる、簡単な計算のミスを連発する、指の皮が一夜にして全部剥ける、異様な虚脱感と疲労感(おかしいと思いエネルギーを取るべく砂糖をざりざりと食べるといった奇行に走る)、土日も抑うつ感、着ぐるみを着ているときも途切れない仕事への嫌悪感と非現実感、早朝覚醒、仲間との会話の反応が少し鈍いと言われる……などです。

 

 実際にうつ病にかかった人に相談すると、通院してもおかしくないレベルと言われました。流石にそれは針小棒大なと思いましたが、行動するなら早ければ早いほどいいと言われ、まずは一番穏健な方法であると思われる、会社の上の人に相談するというのを実行しました。効果はてきめんで、おそらく今まで受けた"カウンセリング"の中でも、一番心が楽になったのでした。

 

 とは言うものの、別に僕が"認知"してる事象そのものは何ら変化してないわけで、うんこだったのが、カレー味のうんこになったくらいのもので、そこまで明るい気持ちになれないのです。そこで、先日ドラッグストアで、漢方薬の加味帰脾湯というのを購入してみました。いわく、精神不安やうつ病に効果があるそうです。TL には非常に多くのうつ病患者がいて、まあ人によってありとあらゆる薬を服用しており、その薬によって確かに効き目があるのだろう、というのは分かりますので、薬が精神(まあ脳なんだろうけどね)に作用し、抗うつの効果があるということは信じられます。物は試しです。徐ろにその漢方薬を手にし、レジに持っていきました。

 食前または食間に 4 錠、一日三回服用するようです。職場でメンヘラアピールするわけにもいかないし、僕のうつ病希死念慮が湧くほど深刻なものでもなく、何より高いので、一日二回にすることにしました。そう、とにかく高いのです。なんと、7日分(84錠)で 2000 円もするのです。おいおい、精神ぶっ壊れたときの修繕費って高いんだな。これで、マジで精神科なんかに通おうもんなら、鬱の原因になった職場から貰った金を職場が原因でなった鬱の治療に使うという、究極のウロボロス自転車操業が始まるのです。生きるって、大変。そりゃ椛くんみたいに果てしない現実逃避の旅路にでも赴きますわ。でも、きっと高い薬だから効きます。高い薬は効くのです(大事なことなので 2 回言った)。以前研究室で酒を飲んだときに、准教授が「このワインも一つやな」と言ったにも関わらず、誰かがそのワインの値段を言うと、急に手のひらを返して「いやー、やっぱ高いワインは美味いね」と言い出したことを思い出しました。現金な人です。そう、高い酒はうまいのです。だから、高い薬も効きます。


 果たして、僕の場合はなんと飲んだ翌日からなんとなく効果が出てる感じです。感覚としては、普通にしてるときはなんともないが、ネガティブなことを思いついたり、ネガティブな出来事に直面しても、ネガティブ思考回路が通行止めになってる感じです。これはありがたい。それまで、考えても結論が出るわけでもないことを延々とこねくり回して、勝手に一人で塞ぎ込むみたいなことがよくありましたが、薬を飲んでから、そういうことが減った気がします。別に能天気になるとか、鈍感になるとかそんな感じじゃないです。ネガティブ思考回路が通行止めになると、ポジティブなことを思いつく余裕もできるのですね。「見られてる」じゃなくて「見てくれてる」とか。まあ、別に、やはり事象そのものは変化してないので、人生バラ色ではありませんが。お先真っ暗だったのが、まあ 3 メートル先くらいまでは見通せるようになったかな、とかそんな具合です。58 円(特売)のカリー屋レトルトカレー味のうんこが、203 円の銀座カレー味のうんこになった感じです。結局、会社なんてうんこですからね。

 

 とにかくプラシーボ効果ってすごいですね。

熊本

 最近、1 秒間に 24 回くらい「学生時代に戻りたい」って思っている気がします。端的に言って、辛すぎます。人間、相性というものがあるのですね。いくら、パフェとカレーが双方美味しいからと言って両方同時に食べるということは、普通しないと思います。ですが、社会または会社というのは、それを同時に食う場所なのです。同時に食べた結果、やっぱり不味かったねで済ませられればいいのですが、しばしばこれを食べ続けなければなりません。挙句、どちらか一方のせいにされます。当然ですが、えらいほうが勝ちます。パフェの方がえらければ、カレーの方に「非常に問題がある」と言われる羽目になるのです。確かに、言われてみると、そのカレーは人参が若干生だったり、ルウが足りていなかったり、と問題があるのは事実なので、尚更のこと悩むのです。カレーを責めたところで、カレーパフェは美味しくなんかならないのに。ってとこまで書いて、「カレーパフェ」でググるクックパッドが 8 件も引っかかりました。なんだよ、やっぱり俺が悪いのか。クソが。

 

 さて、うつ状態になりながらも、辛うじて文章は書けるので本日の話題。僕は、18 きっぷで旅行するのが好きで、長期休暇*1には、乗りつぶしも兼ねていろんなところへ旅行している(いた)のですが、今まで一番ハードだったのが、千葉県から中央本線飯田線*2を経由して京都まで一日で帰ってくるという行程だったのですが、二番目にハードだったのは京都から熊本*3まで一日で行くという行程でした。なんせ始発が終電の三本前という有様でした。朝 5 時の列車に乗って、着くのが夜の 21 時とか22 時でした。僕は、乗りつぶしもできるだけ退屈しないよう、途中下車を挟んでのんびり行くのですが、このときばかりは確か一回しか途中下車できてないと思います。

 

 なぜ熊本に行ったかというと、他でもない卯月くん*4 に会うためでした。今では社畜で九州島から出られなくなってしまった身であるが*5、当時まだ大学院生だった卯月くんは、今よりは時間の余裕もあり、僕が遊びに行くことができたのでした。

 

 卯月くんとナニをしたのかはあまり覚えていませんが、とりあえず卯月くんの部屋*6のベッドで一緒に寝たことは覚えています。卯月くんが朝妖夢*7 になって起こしてくれました。なんていうか、ウブですよね。

 卯月くんは僕をドライブに連れて行ってくれました。おべんとうのヒライでちくわサラダ*8を一緒に買いました。そして、南阿蘇鉄道に一緒に乗りました。阿蘇下田城ふれあい温泉駅は、駅舎に温泉が併設されており、一緒に入りました。熊本は自然が雄大でほんと景色が美しかったです。
 卯月くんは、僕がホモに目覚める(?)きっかけになった一人でもあり[独自研究?]、当時は熱烈なラブコールを送っていたのですが[要出典]、ついに卯月くんは振り向くことはなく、女性レイヤーさんの方を選んでしまったのでした*9

 

 熊本と言えば恐ろしい幼女*10がいることで有名だが、それはまた別の話。

*1:学生を生かし、社会人を殺す用語。研究室生を除く学生は 2 ヶ月の長期休暇があるのに対し、社畜はわずか 5 日程度しかない。

*2:長野県の辰野から愛知県の豊橋までを結ぶ長大なローカル線。乗り通すと 7 時間近くかかる

*3:正確には上熊本。実は僕は、鹿児島本線熊本駅まで乗り潰せていない。

*4:着ぐるみクラスタの知り合い。変態ヘタレというキャラで、他の人にホモと言わしめるほどだったが、いつの間にか女性レイヤーさんとよく遊ぶようになっていた。出会い厨である(違。

*5:たまに関東に出てくると、飛行機に乗り遅れて、今度は九州に帰れなくなってしまう。

*6:散らかっていたが、かなり広い部屋だったのでなんとか秩序を保ててるような感じだった。今は福岡に引っ越し、ひどいことになっているらしく、なかなか家に上げてくれない。よっきーさんのように強引に押しかけないと家に入れてくれない。

*7:魂魄妖夢東方Projectのキャラクターで、卯月くんの初めの娘さん。ぬこ面 5 式のカスタムである。

*8:熊本のローカルフード。つくわにポテトサラダが挟まれたお惣菜である。

*9:些か批判的かつネタにするような言い回しで書いてあるが、着ぐるみもコスプレの一種であるという観点に立てば、両者の交流が生まれることは実に好ましいことであり、賞賛すべきことである。

*10:紗夜というi-keyさんの娘さん。腹パンしてくる。

グリーティング

 今日も会社の労働がしんどかったので、湯船にお湯を貯めました。いやあ、お風呂、いいですね。寮の連中は共用のシャワーしかないみたいです。ちょっとした監獄ですよね。
 というわけで、例によって、お風呂からブログを書いています(このパラグラフを執筆時)。労働辛い社会人辛いと言っても、なんだかんだで文化的な生活ができてるんじゃないかと思います。ところで、最近、Twitter のアカウントが消されてしまった*1 どざいさん *2 が、Twitter のアカウントを消された腹いせにか、怒濤の勢いでブログを更新しています。一方、僕がブログを始めたきっかけになった笹松氏*3 もブログを絶賛更新中です。どちらのブログも、攻撃的な口調で実は自虐を重ねるスタイル、軽妙な語り口で淡々と狂気に溢れたことを書き連ねるそのスタイルと、独自のカラーを持ちながら、さながら語彙の動物園のごとく自由闊達に述べられており、我々を魅了させてくれます。僕も、負けじとブログを書いてみるのですが、僕は彼らほど狂気に満ちていないので、まともな文章しか書けません。僕の地獄への道は、ほぼ労働で舗装されていて、決して善意で舗装されていて、中央分離帯には線路が敷いてあって、5 分に 1 本千里中央行きの電車が来るわけではないのです。

 

 閑話休題。地獄への道が労働で舗装されているのなら、天国への道は何で舗装されているかというと、それはもう着ぐるみでしょう。決して労働の筋肉痛を癒やすサロンパスではありません。当然、中央分離帯には線路が敷いてあって、今度は 5 分に 1 本なかもず行きの電車が来るというわけです。では、とりわけ着ぐるみの何が一番救いになるのかというと、そう、グリーティングなのです。おそらく、僕は着ぐるみ界隈でも一二を争うくらいグリーティング好きです。イベントで一番重視することはロケーションよりもグリーティングです。グリーティングとは、着ぐるみ界隈でしばしば使われるテクニカルタームで(もともとはディズニーランドの用語?)、着ぐるみとは関係のない通りかかりの一般人と触れ合ったり、写真を撮ってもらったりすることです。
 グリーティングの魅力を語るだけでちょっとした小論文さえ書けそうな気もしますが、尺の都合上、簡単に二点にまとめます。

 

 一つは承認欲求の充足感です。
 会社では付け添えのパセリ未満の存在価値しかない僕が、着ぐるみを着ることで見ず知らずよ老若男女に「可愛い」って言ってもらえるわけです。承認されるわけです。
 ただ、認められてるんは、自分ではなく自分の"ガワ"なんじゃないかという懸念はあります。なんせ顔が隠れていますからね。ごもっともな懸念です。もっとも、カルタちゃん*4の場合は自分で作ったので、面が可愛いと言われるだけで、十分嬉しい評価なのですが。
 では、人が着ぐるみに入ったときに、中の人が評価される要素というのは、つまるところ、体格と操演だけなのです。特に、自分は操演に対して評価されると、舞い上がってしまいます。グリーティングでよくある光景なのですが、僕が着ぐるみ(特に椛)に入って誰か一般人に手を振って、相手が反応してくれたときに、ぴょんぴょんしてみたり、愛らしい(と思う)仕草をしてみたりして、精いっぱい相手にアピールします。そして、相手がそのことに対して喜んでくれたり、笑ってくれたり、相手も僕の仕草やポーズを真似してくれたり、「可愛いね」って声をかけてくれたりすると、もう最高です。アドレナリンだかエンドルフィンだか知りませんが、中の人の脳内麻薬はだばだばです。
 椛は当然ずっと笑顔ですが(着ぐるみだからね)、中の人もすごく楽しんでいます。その楽しんでいる様子が外の人にも伝わっているといいなあと思っています。少なくともよっきーさんには伝わっているみたいです。「本当に生き生きしていて、心底楽しそう」と。ありがとうございます。僕は、褒められて伸びるタイプなんです。一般人に喜んでもらえ、マスターさんであるよっきーさん*5 にもこのように言ってもらえることで、僕は多分"伸びた"んだと思います。もっと可愛くなりたい、もっといろんな人に喜んでもらいたいという欲求が僕をここまで突き動かしました。いやはや僕は素晴らしい師匠を持ったようです。
 ちなみに、喜んでもらえて一番ドキドキするのは、同年代の女性だったりします。特に女性は妖狐×僕SSを知ってる場合があります。以前、梅小路公園のロケ*6 で、大学生のサークルかと思われる十人ほどの男女のグループのうち、一人の女性が「カルタちゃんや! すごいめっちゃ好きやねん! 一緒に写真撮っていい?!」と声をかけてくれたのは、本当に嬉しかったです。グループの他の人にシャッターを切ってもらい、ツーショットを撮ってもらいました。もっとも、女性に可愛がってもらうことだけが嬉しいのではありません。同年代の男性にも、「うお、なんか動いたら結構可愛いねんけど!」と驚かれたり、男子数人のグループだと仲間の"ノリ"で一緒に写真を撮ってもらったりすることも。そのときは、腕を組んで結構密着しちゃいます。「俺今めっちゃモテ期かもしれん。てか、胸当たってんねんけどw」と言われたときは、ちょっと興奮しましたw 子どもも大好きです。子どもは素直に喜んでくれるので、こちらも楽しいです。だいたいおずおずと近づいてきて無表情(でも興味津々)みたいな反応が多いですけどね。ただ、いきなり抱きつかれたこともあります。満面の笑みでした。いいですね。愛に溢れていて。なんて優しい世界なんでしょう。おっちゃんやおばちゃんももちろん嬉しいです。おばちゃんなんかは結構、可愛いって言ってくれますね。投げキスしてくれる人もいます。
 承認欲求とは言いましたが、やっぱり純粋に自分の着ぐるみを見て、みんなが笑顔になってくれるのは、素直に嬉しいし、楽しいですし、やり甲斐も感じます。やり甲斐というか、もはや生き甲斐レベルですね。No Greeting, No Life. グリーティングがなければ、今頃僕は近鉄電車の線路の中でしょう。意識高い系の人にdisられますね……。

 

 で、そんなことを言いつつ、もう一つの魅力は、背徳感でしょう。だって、男が布で全身を覆って、女の子の衣服を身に着けて、女の子のお面を被って、街中に出ちゃうんですよ。変態じゃないですか。でも、着ぐるみの凄いところは、それで人を楽しませることができること。露出狂の人とか女性ものの下着を頭に被る人(変態仮面)が街中に出ても、通報されて終わりじゃないですか。同じ変態的行為でも雲泥の差です。もっとも、着ぐるみでもよっぽど面の出来が悪い、動きが挙動不審(おっさん)、サポがいない、場所にそぐわない、など問題があれば通報されますが*7
 性別を偽るというのは、控えめに言って快感です。僕は、「男やろ」って言われたのは一、二回で、「女の子……やんなあ?」って言われた回数の方が多いです(「女の子?」って聞かれたら全力で嘘をつく)。身長がそれほど高くないというのもありますし、あとできるだけ男と見抜かせない仕草を心がけようとは思っています。前述のモテ期が到来した男性、椛の中の人が貴方と同じ性別であるということ、気づいてなかったのかなあ。密着しているのに、気付いてないっての、中の人はホント楽しくて仕方ないです。その胸、シリコンですよ。
 いわゆる美少女着ぐるみに限ったことではないですが、着ぐるみは視界も不自由でいろいろ制限されてると思われがちです(実際そうなんですが)。中の人は虐げられた存在としばしば受け取られています。ただし、中の人は外の人の顔が見えるのに、外の人は中の人の顔が見えないという非対称性を、グリーティングするときの一般人は忘れています。キャラクターの顔が見えてますからね。自分が中の人の顔が見られないということを忘れてしまっているのです。だからこそ、こちらは着ぐるみの中でニヤニヤして、操演ができるんですが。でも、稀に不思議な魅力に気がつく人もいるのですね。そんなときは「沼に! 落ちろ!」って思いながら、全力で可愛い仕草をしています。あっはっは。

*1:垢消し芸。リアルの方で忙しくなったら(本気で単位が回収できなくなった、など)定期的にアカウントを消す。これまでは1ヶ月以内に復帰することで、消したアカウントを取り戻していたが、今回誤って放置しすぎてしまったため、本当にアカウントが抹消されてしまった。

*2:着ぐるみクラスタの人物。大阪府在住の大学生。芸人であると言われているが、本人は否定している。

*3:笹松しいたけ。一時期職場にSNSでの活動がバレ、アカウントを停止していたが、入社わずか一年で退職し転職することで、アカウント及びブログも不死鳥のごとく蘇った。

*4:髏々宮カルタ。『妖狐×僕SS』の登場人物。僕の着ぐるみの娘。ぬこ面の素体を用いて、自分で作った。

*5:僕の「師匠」でもある。

*6:けろさんの企画。梅小路公園は京都の公園で、花見の時期は多くの行楽客で賑わう。

*7:そのような事例はいくつかある。警察が動いた例もある。