のんのんびより

 のんのんびよりというアニメがあります。小学生の女の子であるれんちょんを主人公とした、ど田舎の学校が舞台のアニメです。特にどたばたもなく、恋愛もなく、バトルをすることもなく、当然謎の白い猫みたいなやつが契約を迫ってくることもありません。いわゆる「日常モノ」とよばれるジャンルに属するものです。一クールに最低一本はこういうアニメがあってほしい。そんなアニメです。

 

 「日常」があんなに平穏無事なものだったらどれだけ嬉しいのでしょう。およそ多くの社会人にとっての日常は、つらく苦しいものでしょう。来年度から僕は社会人になってしまうわけですが、不穏な話を聞くたびに頭を抱えます。理不尽と憤慨と嘆きを教という日に押しこめながらそれを過去へ過去へと追いやっていくのです。明日やってくる「明日」にもまた理不尽と憤慨と嘆きを押しこむのでしょう。救いなんてどこにもないです。救いがあるなら、それこそがきっと「日常」アニメなんでしょう。うつ病に効果があると言われる理由も分かります。アニメの「日常」は、我々の「非日常」、はっきり分かんだね。

 

 ただ、のんのんびよりに関してちょっと困ったことがあります。前段落で「あんな『日常』がうらやましい」と述べましたが、あれが日常だったら嫌です。それは何かというと、ど田舎であるということです。僕はど田舎だけは嫌です。その一心のみで就活をしました。化学系の悲しみ。それは、勤務地が意味不明な僻地であることが多いということです。僕はそれを回避すべく、企業の事業所がどこにあるのかつぶさに調べました。ど田舎は回避しましたが、まあ些かしょっぱそうな気配のする会社です。

 

 僕の研究室の先輩の一人は、就職によって北陸の寒村に幽閉されました。四方を山か海に囲まれている閉塞的な場所です。そんな田舎で「のんのんびより」のような、のんのんした日を送っているかというと、そうではありません。悲劇的な毎日を送っているようです。あまりにやることがなさすぎてついに宗教にハマりました。田舎 + 小学生は「にゃんぱすー」ですが、田舎 + 社会人はこのような結末になるのです。駄菓子屋になるしかありません。

 

 nano.RIPEの「なないろびより」っていい曲だよね。