むかご

 むかごは、山芋の葉の付け根にできる球芽です。実家では、小学生の頃、よく食べていました。父が、アウトドア系で、どこかの山に登った時に、適当に取ってきたのを庭にばらまいていたのでしょう。翌年からは庭でむかごが取れるようになりました。見た目はあまり良くないのですが、塩でぱらっと炒めると、やや独特な風味ながら、とろっとした山芋を感じさせる食感で、おつまみ的で美味しかったのを覚えています。

 父が採ってくる山菜等は、むかごの他にあけび、わらび、つくし、たけのこ、ぎんなんなどがありました。特に、わらびとたけのこは春先になると、いつも炊いたのを常備していて、風物詩となっていました。子どもだったので、特別に美味しいとは思わなかったのですが、それでもやっぱり楽しみではありました。あけびは、今見るとなんだか卑猥な見た目をしていますね。バナナのようにドロッとしていて、かなり甘かったのですが、今食べるとひょっとしたら美味しいと思わないかもしれません。

 父は、秋や冬になってくると、そのへんで柿やみかんも採ってきていました。父は、熟れたじゅるっとした食感の柿よりも、全く熟れていない固い柿が好きで、僕もそれに影響され、今でも柿は固い目のものが好きです。

 我が家は一軒家でしたので、家庭菜園もありました。いちごやぶどう、トマトやきゅうり、アスパラ、梅などは、家で採れたものが食卓に並んでいました。どれも形は不揃いながら確かに美味しかったです。きゅうりは、水で洗ってそのまま外で塩をかけて丸かじりしていました。最近でこそ、父もそこまでの余裕や興味をなくし、家庭菜園はやっていないみたいなのですが。実家と疎遠になってしまっても、麦わら帽子を被った畑仕事をする父の幻影は何だかちらつきます。