さつまいも

 僕が在学していたときの研究室では、主に高分子希薄溶液の物性について研究していました。扱うポリマーは、PVA*1 やPS*2 やそれの特徴的な幾何構造を持った高分子でした。しかし、一方で、完全に自然由来のエネルギーを利用した、でんぷんやセルロースの合成も行っていました。しかも有機溶媒中ではなく、地中で進む反応です。エコですね。今流行のバイオテクノロジーです。

 まあ、ぶっちゃけて言うと、さつまいもを栽培していただけなんですけどね。教授の趣味で、大学の敷地の花壇を改造し畑にし、そこでさつまいもを育てていました。何年か前は、花壇ではなく大学近くの谷底に畑を作っていたため、野生の鹿や野生の近隣住民によく掘り起こされていたそうです。

 

 さつまいもは、家庭菜園の中では、極めて育てやすい作物らしく、実際何もせずにただ単に水を上げるのと、適当に雑草取りをするだけですくすくと育っていきました。植えるのと収穫は教授やJK*3 も参加しますが、日々の世話は学生の仕事でした。毎日、学生みんなで昼ごはんを食べに行った後、水を上げていました。僕が B4 の頃は、長期休みの間も院試勉強のために大学に来ていたため、一人で水やりをしていました。夏になると本当に青々と葉が茂るので、なんだか愛着が湧きます。

 

 収穫したさつまいもは、秋に京大において、阪大の研究室と合同でやる中間報告セミナーで調理され振る舞います。メインは豚汁に入れるものですが、他にもポテサラにしたり、コロッケにしたりデパ地下風*4 にしたりといろいろな料理に用いられました。が、さつまいもというのは、そもそも甘みがあり、お菓子向きで料理にはあまり向いていません。前述のポテサラでは、大量のマヨネーズで甘みを消し、コロッケでは、塩で甘みを消すという、さつまいものいいところを全力で殺しにかかるという調理法でした。なまじ、美味しいさつまいもだったため、わりともったいない使い方ではありました。

 

 さつまいもは大量に収穫されるため、前述のセミナーでは消費しきれないことを見越し、それまでに普段の研究室で、ふかしいもとして消費していました。時期になると、徐ろに「芋でも蒸かすか」と、研究室にある蒸かし器で、芋を蒸かしていました。そして、学生みんなで蒸かした芋を食うというのが、秋の研究室の風物詩でもありました。前年までの先輩が、あまり芋を食べなかったため「どんどん食べろ」と JK からも言われていましたが、僕らの代の学生があんまりにも芋を蒸してよく食べるため、セミナーの分がなくなってしまいそうになり、「もう食べるな」と禁止令が出るまでになりました。

 

 まあ、今考えると、研究室って大らかでのんびりしていたって思いますねえ(社会人顔)。

*1:ポリビニルアルコール。

*2:ポリスチレン。

*3:助教

*4:先輩が CookPad で調べたという料理。薄切りにしたれんこんでさつまいもを挟み、素揚げし、酢をメインとした調味料で味付けする。教授には不評。