椛*1 は、僕の着ぐるみ観に大きな影響を与えました。
 僕は、着ぐるみを始めるまで、極端なことを言うと、着ぐるみをエロの道具としてしか見ていませんでした。中学校はもとより小学校の頃から、着ぐるみに対して屈折した感情を抱いていた僕にとって、いわゆる美少女着ぐるみと称されるジャンルは、垂涎のフェチの対象でした。更にこじれることになったのは、inside doll*2 でして、それはもう僕の偏狭な嗜好を、さらに歪曲させるには十分なインパクトを持つものでした。僕の着ぐるみに対する感情は、単刀直入に言うのなら「着ぐるみを着てオナニーがしたい」というような酷いものでした。今でも思ってるけどな!(まさに外道) 世間には、着ぐるみさんを迎えておきながら、表に出てこない娘さんがたくさんいることを憂い嘆く方もいますが、ぶっちゃけそうする人の気持ちも分かります。着ぐるみを迎えて着て、操演の「そ」の字も覚えることなく、鏡の前でシコって満足して寝てしまう、そんな種族がいることは、実は想像に難くないことなのです。

 初めて椛を着させてもらったのは、5 年ほど前の二葉小*3 のイベントでして、右も左も分かっていなかったが、上と下の区別はつくくらいになっていた頃に、よっきーさんに「着てみる?」と言われて、イベントに連れて行ってもらったのが最初でした。最初は、勝手が分からず、まごまごしていましたが、周囲の人の反応を見るにつれて、次第に自分の行動や感情が、"椛の意識"とシンクロしていき、楽しいという感情を覚えるようになりました。

 椛のマスターであるよっきーさんにも大変喜んでもらい、その後も幾度となく椛の代理内臓をさせていただき、数年前から椛の内臓は、よっきーさんよりも僕が担当することが圧倒的に多くなりました。身に余る光栄です。よっきーさんの文と、くっしーの椛。安定感のある組み合わせとして定評をいただくようになり、僕はよっきーさんの相方、専属内臓として活動するようになりました。手前味噌ではありますが、僕の椛の操演は好評を博しているようで、恐悦至極であります。先程も述べたように、椛の意識が僕の意識とシンクロしているので、何か特別頑張っているわけでなく、むしろ脳直で動いています。だからこそ、楽しいのでしょう。僕が楽しいのは、つまり椛が楽しんでいるからなんだと思います。
 
 着ぐるみを構成する要素の中で、最も魅力的で僕を誘惑するものは、それはもうグリーティングと言えるでしょう。男でありながら、女の子の格好をして、女の子のふりを人前でして、可愛いと喜んでもらい、賞賛される、win-win の関係と言われるやつです。着ぐるみという日陰的でアンダーグラウンドな趣味で、世間一般人の前に出て、純粋に楽しんで面白がってもらうことができるというのは、新鮮でやり甲斐を感じることでもあります。僕はグリーティングに対して、変態性欲と承認欲求と奉仕精神と秘匿快感を粉砕撹拌し、遠心分離し、上澄み液を抽出し、蒸留して濾過して得られた溶液のような複雑な組成でありながら、純粋な感情を抱いています。

 グリーティングに関する話は、また今度の機会に。

*1:犬走椛東方Project に登場するキャラクターであり、初出は『東方風神録』。ここでは、よっきーさんの所持する着ぐるみを指す。

*2:とん太さんによる小説サイト。中の人が男性の美少女着ぐるみが登場する小説ばかりが置かれており、倒錯した性癖を持つ人々を刺激する扇情的な文章が書かれている。

*3:神戸市長田区のコスプレイベント。街なか全体がイベント会場となり、自由にコスプレで出歩くことができる。