カラオケ

 初めてカラオケに行ったのは高校一年の頃でした。高校の文芸部の、文化祭の打ち上げとして行ったんだと思います。初めてのカラオケのことはあまりよく覚えていませんが*1、まあ多分楽しかったんだと思います。それから、2ヶ月に一回程度の頻度で、同様のメンバーでカラオケに行くようになりました。当時行きつけだったカラオケは、ジャンカラ藤井寺店でした。同じ高校のみんなの溜まり場でもありました。

 

 機種はDAM。それもCyber DAMでした。こんなことを書くと、老人と思われそうですが、僕が高校一年のときは、初音ミクはこの世には存在しなかったのです。今になってみると、ミクさんが存在しないという世界そのものが信じられないくらいなのですが、当然VOCALOIDの楽曲もカラオケには入っていませんでした。高校2年のころになりVOCALOIDが世に出てきて、瞬く間に世間を席巻します。ボカロ黎明期に立ち会えたことは、僕の財産になっていると言っても過言ではないかもしれません。嘘です、ちょっと言い過ぎました。で、それから1年ほどして、JOYSOUNDにボカロの曲が入りだします。ただ、行きつけだったジャンカラはJOYの筐体の設置がなく、むしろそのジャンカラしか知らなかった僕にとっては、JOYは都市伝説だろう、という感じで、泣く泣くDAMしか置いてないジャンカラニコ厨っぽい曲を歌っていました。音痴でしたが。

 高校を卒業し、見事京大を滑った僕は、駿台で僕の人生の三本の黒歴史に入るであろう浪人時代を過ごします。そんな鬱屈した浪人生活で数少ない癒やしだったのがカラオケでした。金曜日は午前で授業が終わっていたため、午後は千日前のシダックスヒトカラをしていたのでした*2。千日前のシダックスにはJOYの筐体が置かれています。ドリンクバーが有料で、部屋代がジャンカラの倍近くする高級カラオケ店シダックスでしたが、それでも行く価値はありました。なんたってぼからが歌えるから。


 そんな時代を経験した僕でしたが、時代はさらに下ります。当時、通信カラオケ最大手はDAMで、これさえあればオッケーという風潮がカラオケ店にもあったのでしょう。ところが、上述のようにJOYを指定する客が目に見えて増え、あるいはDAMしか置かれてない店舗の利用客が減ったのでしょうか。ジャンカラにもJOYが置かれるようになりました。現在は、おそらくどの店舗にもある程度の新旧の差はあるとは言え、JOYの筐体が置かれています。これで高級カラオケ店シダックスに用はなくなりました。あばよ、シダックス
 一方、殿様商売であぐらをかき続けてきたDAMも流石に危機感を覚えたのでしょうか。なんたって、当時JOYで歌われた楽曲ベスト30のうち4分の1がVOCALOID楽曲という状態でした。"売れ筋"トップに並ぶ曲がないDAMは、いくらなんでも品揃えが悪すぎでしょう。これは喩えるなら、ケーキ屋に行って「ショートケーキは?」「ありません……」「モンブランは?」「ないです……」「じゃあ、チーズケーキを」「すみません……」。業界一位の通信カラオケが数年間に渡ってこんな体たらくだったとは情けなさすぎでしょう。どのタイミングかはあまり覚えていませんが、一念発起して猛烈な勢いでVOCALOID楽曲を入曲し、今やJOYと遜色ないレベルにまで並びましたが、やはり老害である僕としては、上述の情けない時代の記憶が色濃く残ってることと、DAMがサボってた時代の曲が抜け落ちてる場合がしばしばあったことから、今でもカラオケに行く際はJOYSOUNDを必ず指定します。

 

 「好きこそものの上手なれ」という諺がありますが、その一方で「下手の横好き」という諺もあります。僕にとって、その最たる例が、カラオケです。カラオケに行くこと自体は大好きなのに、音痴なのです。わざわざカラオケのことを延々記事に書く程度にはカラオケ好きなのに、音痴なのです。僕はドMなのでヒトカラのときは採点を入れるのですが、大抵ボコボコにされます。アドバイスみたいなところで、「緊張してる?」とか「周りを気にせずに」みたいなコメントをされるのですが、うるせー! 俺はもともと歌が下手なんだよ! なぜか「君が代」だけは高得点なのですが。右翼か! リズムが取れない音程が合わない、そもそもうろ覚えという問題があります。そのわりにはレパートリー自体は多く、100曲か150曲くらいあるんですけどね。7時間ヒトカラしたこともありますが、途切れませんでした。が、75%がVOCALOID関連楽曲、20%がアニソンなので、"お外"に行って歌える曲はほぼ皆無です。本当にありがとうございました。
 まあ、着ぐるみが趣味でも、操演がクソだったり体型が雑魚だったり、ということは非常によくあることなので、まあ「下手の横好き」でいいんじゃないですか。僕も「あいつカラオケ趣味なのに歌唱力クソ」とか後ろ指差されてるんでしょうね。え? お前の操演や体型はどうなんだ? いや、まあ、それは「好きこそものの上手なれ」になれるよう頑張ります……。

*1:文芸部員で引きこもりキャラだった涼露が、遅刻してカラオケ店の最寄りの駅まで来たにも関わらずなぜか顔を見せずに帰ったということだけは覚えている。

*2:平日の午後だというのにわざわざ予約までしていた。ドリンクバーが有料なので勝手に外で買ったお茶を持ち込んでた。