マジカルミライ2017

ミクちゃんを持っているんだから、行ってきなよと言われ、4月に軽率に応募したところ当選し、先日マジカルミライに行ってきた。

 

マジカルミライのテーマソング「砂の惑星」を聞いたときは、端的に言って、嫌な気分になった。

 

僕自身がハチさんの曲がそこまで好みでないという点もあるが、それにしたって10周年の式典にこんな曲提供するなんて、サイコパスか何かかよ、と思うくらい不穏な気分になった。

 

しかし、聞けば聞くほど不思議な魅力というか味が出てくるように感じるのも事実で、皮肉にも煽りにも激励にも聞こえる変な曲に取り憑かれていったというのもまた否定できなかった。

 

曲中で出てくる古参を刺激する歌詞や、メルトを彷彿とさせる虹色の鍵盤など、胸を締め付けられる演出が多く、伊達に十周年記念を謳ってないと唸らせる。

 

砂の惑星のMVには二人の(?)ミクが出てくる。
冒頭から登場するいかにもハチさんっぽい(笑)ミクと、「甘ったるいだけのケーキ」以降で登場する、"我々の(少なくとも僕の)記憶の中にあるミク"である。その異質な対称性に、何らかのメッセージ性を感じた。

 

ああ確かにそういや、最近ボカロの曲を漁っていなかったなあと思った。
最近の曲だと思っていたら、4年前の曲だったとかザラである。

 

「思いついたら歩いていけ 心残り残さないように」の歌詞と、最後の砂でできたケーキに耐えきれなくなって、ニコニコのVOCALOIDカテゴリのデイリーとウィークリーランキングがブラウザのブックマークに加わった。
皮肉にも、皮肉な歌が人を動かすエネルギーを持っていたということである。

 

さて、そんなわけで行ってきたマジカルミライであったが、一抹の不安はあった。
セトリの大半が分からない曲だったらどうしよう、だとか、周りの熱量に圧されてついていけなかったらどうしよう、だとか、そもそもライブというものに行ったことがない、すなわちライブのいろはも分かっていないのに行っていいのだろうか、と。

 

しかし、そのような考えは杞憂以外の何者でもなかった。実際分からない曲も2,3曲あったが、そのようなことは瑣末な問題に過ぎなかった。ミクたちが歌ってくれる場所に、しかも10周年をみんなで共有できるそのようなステージに立ち会えるということで、何がそんなに要求され、何をそんなに気を揉む必要があろう。

 

オープニングのみくみくにしてあげるで、心が踊り、ストリーミングハート、エイリアンエイリアンと、開始3曲でこのあとの体力に不安を覚えるほどボルテージが上がってしまった。

 

さっき買ったペンライトを振り回しながら、夢の中にいたかのような心地になっていたのだ。無論翌日筋肉痛になったのは言うまでもない(それでも"危険予知"をして、時々交互に持ち替えていたのだが)。

 

ふと冷静になって周りを見渡すと、テンション上がっちゃったと思われる女の子が、二刀流のペンライトを振りながらぴょんぴょん飛び跳ねている。可愛いなと思って、もっと冷静になってみたら、自分もぴょんぴょん跳び跳ねていたという具合である。最高だ。

 

僕にとってサプライズだったのは、えれくとりっく・えんじぇぅが流れたことだった。僕にとっては、ボカロ黎明期の曲だと位置付けている*1のだが、完全に予想外のところからの選曲*2だったので、舞い上がってしまった。

 

あと、脱法ロック。これはマジカルミライ抜きで、ここ最近知った曲で、サイケデリックなサムネに怖じ気をなして聞いてなかったのだが、いざ聴いてみると、その中毒性と歌詞(特にサビ。なんか病んでたときに聴いたので、元気をもらえた気がする)と、やっぱり意味不明のMVに魅了され、密かに気に入っていた曲。

 

マジカルミライの公式CDの曲にも収録されていて、内心おっと思っていたのだが、いざ流れてみるとやっぱりかっこいい。
レンくん、往年の卯月くんと同じくらいヘタレだと思っていたのに、かっこいい。
Fire◎Flowerも同様である。

 

アンコール前の大トリは、メルト。定番である。王道である。教科書か! 最高かよ!!
そして、アンコールではHand in hand、39みゅーじっく!、DECORATOR。もはや理屈抜きでいい曲である。

 

アップテンポな曲もあるかと思えば、Birthdayやツギハギスタッカートのようなバラードっぽい曲もあり、VOCALOIDという"音楽ジャンル"が持つ、音楽ジャンルの広さを感じさせられた。
また、会場の照明や画面を使った様々な演出などに心を踊らされた。

 

などと、冷静な論説を垂れてみたいところだが、とにかく無我夢中だったので、振り返ってみると、やっぱり夢だったのじゃないかと思うくらい素晴らしかった。

 

最後のエンディングはハジメテノオトだった。
おいおい、暴力か。泣かせるつもりか。バイオレンスか。勘弁してくれ。
会場全員で斉唱した。

やがて日が過ぎ 年が過ぎ
古い荷物も ふえて
あなたが かわっても
失くしたくないものは
ワタシに あずけてね

(略)

もしもあなたが 望むのなら
何度でも 何度だって
かわらないわ あのときのまま
ハジメテノオトのまま…

当時聞いても本当にいい曲だと思ったし、10年という節目に聞くとさらに別の意味で深みを増していい曲に聞こえる。これを最後に持ってくるなんて、ベタなのかもしれないけど粋だ。マジで泣くかと思った。

 

僕は、日本という国の平成という時代に生まれたことに感謝しなければならないと心底思った。

 

全ての公演が終了して2時間経っていたことに驚愕した。
始まる前は2時間ってわりと長いよなあ、と思っていたのだが、信じられないくらいあっという間だった。アインシュタイン相対性理論か?!と思った。
「これをもちまして全ての公演を終了させていただきます」のアナウンスに、冗談はよしてくれよ、と思ったほどだ。
永遠に続いてくれ、と思った。

 

終わってみて、とにかく楽しかった。行ってよかった。

 

方方から殴られるかもしれないことを承知で言うと、半ば立ちション発注*3に近かったミクちゃんであるが、それのお陰でマジカルミライに行けたのだとしたら僥倖である。

 

来年はなんとインテックス大阪でも公演するとのことである。まいどーるも5年で終わってしまったし、マジカルミライも10年/5年という節目であり、よりによってテーマソングがあれ(笑)であったことから、もしやだなんて思ったが、そんなことはなかった。絶対に行く。

 

……と同時に、今回3万人に祝われたミクであるが、自分がミクのマスター*4もとい内臓であるということで背負っている十字架は思った以上に重いなあと感じた。身の引き締まる思いがした。が、それはまた別の話。

 

興奮しすぎて脚攣って今もちょっと痛い。

*1:逆に、最近ボカロを知った人は知らないんじゃない?

*2:「私の時間」なんかも来るんじゃないかと思っていた。

*3:綿密な計画もなく、気軽に娘を発注すること。ある人が立ちションをしながら、たまたま隣に工房主がいたのでその場のノリと勢いで発注したことに由来。

*4:VOCALOIDで「マスター」って言うと別の意味に聞こえるな。