大人の修学旅行

 先日、けろさんの企画で、京都の方で一泊二日のロケ企画に参加してきた。なかなかこの企画が苛酷で、かなり上級者向けの構成となっている。

 

 その仔細はこうである。1日目は終日京都の梅小路公園でロケである。春の梅小路公園と言えば、地元の花見観光客でかなり賑やかなことになっている。また、子供たちも多いので、かなりガヤガヤとしている。そんな中に着ぐるみさんを投入したらどうなるか。ピラニアのように子どもたちに囲まれて、一緒に遊ぶことになる。はっきり言ってかなり楽しい*1


 その後、車に分乗し宿にチェックインしたあと、上賀茂のバイキングで夕食、みんなで銭湯に入って宿に戻ってきて宴会という具合である。移動や荷物の積み込みに時間がかかることもあり、宿に戻ってきた頃には23時過ぎになっていた。そしてさらにそこから宴会が始まるのである。僕自身はそこそこに切り上げてきたのだが、それでも就寝したのは2時近くになっていた。

 

 翌朝の起床時間は、なんと6時。睡眠時間は4時間なのである。鉛のように重い体*2に鞭を打ち、肌タイを着て着ぐるみになる男性である。僕よりもさらに遅い時間まで起きていた人たちも多数いたであろうにもかかわらず、ほぼ全員が早朝ロケに参加したのである。睡眠時間4時間で起床30分後には、もう着ぐるみを着ているのである。そして早朝ロケと称して、嵯峨の竹林の小径で撮影をしたのである。宿からその竹林の小径へも1km近くあり、着ぐるみを着て移動するにはまあまあの距離である。おまけに、竹林の小径は勾配がきついのである。竹林の小径は朝7時前であるにも関わらず、韓国人が数十人おり、結婚式の写真の撮影をしていた。当然、着ぐるみ姿の我々は好奇の対象となり、多数の写真を撮られた。

 

 そのようなハードな早朝行程をこなした一行は、観光客でごった返す蹴上インクラインへ移動。こちらは昨日とうってかわり、天気も比較的よく、かなりの大盛況。おそらくグリーティングをした人数は、100人や200人では効かないだろう。とにかく前後左右360度から取り囲まれ、カメラを向けられ、一緒に写真を撮ってとせがまれたり。歩道を歩いている人からも、「こっち向いてー!」と声をかけられたり、グリーティングが追いつかない捌ききれないような状況。特に外国人が多く、外国人は日本人のように恥じらったり遠慮したりということがないので、拙い日本語で記念撮影をお願いしてくるグループが多かった(特に中国・韓国系)。もちろん快諾。日本旅行で思わぬエンカウントとして思い出に残ってくれれば、これほど嬉しいことはない。もちろん外国人だけじゃなく、日本人にも相当写真を撮られるし、特にお子さんが居たりすると、一緒に写真を撮ってもらうことも非常に多い。「サービス精神めっちゃ旺盛やん」って言われたときは、そりゃもう、僕としては、仕事ではなく完全に趣味でやっていて、グリーティングが楽しくて楽しくて仕方がないので、もう一人でも多くの人に可愛がってもらいたい、相手にしてもらいたい、楽しんでもらいたい、面白がってもらいたいの一心でやっているのだから、当然であろう。

 わざわざ混雑する観光地で着ぐるみロケをやっている理由はここにあると思っている。内輪ではなく外に向けて着ぐるみをアピールすることが目的なのだ。このあたり、グリーティングが嫌いだとか、表に着ぐるみを出すなんて、だとか、室内でしか着ぐるみ出したくないです見たくないです……みたいなアンダーグラウンドな嗜好をお持ちの方とは、たぶん永遠に相容れないんだろうなと思う*3。その点、けろさんの企画するオフは、明確に「一般人にアピールするのが目的です」と言い張っているので、僕の嗜好と合致しておりかなり楽しかった。興味を示していそうな観光客をガン無視して、内輪のサポだけに写真を撮らせるような無粋な行為は推奨されない。

 

 僕は年に数回ある着ぐるみ関係で、こういった外部に宿泊を伴うイベントというのは非常に楽しみにしている。けろさんの能登オフや、ツロシマなんかがそうである。なんというか、大人になって社会人になると、大人数で民宿に泊まったり昼間は遊び呆けたり、酒を飲んだり夜まで騒いだりという経験って、あんまりないと思う。世間でまともとされる人は、成熟したとも言えるが無味乾燥とも言える常識的な日々を送っているんだろうなあ、と思う。まあ、そういう人たちは、合コンとか街コンとかに行ったりして、出会いを求めることに躍起になっているように見える。我々のような神様に授かった生殖器を無駄にしているような人たちは、いい年こいてもこんな修学旅行や大学生のサークルみたいなノリで休みの日を過ごせているのは、現実逃避的であるが幸せなように思える。

 

 子供の頃、不思議だったのは、「親(大人)はどうやって遊んでいるんだろう」ということだった。だいたい「大人は遊ばない」と結論づけていたような気がする。それがこうしたオフに参加して遊べているのは、まあ家庭を持っていないことの証左でもあるが、やっぱり楽しい。"大人の修学旅行"、いいことだと思う。中学生や高校生の修学旅行との大きな違いは、女の子がいないことである。修学旅行の醍醐味といえば、お風呂上がりの濡れた髪の毛の女の子を観察することであった。着ぐるみクラスタではそういったときめきは感じられないのが惜しいところである。でも、着ぐるみクラスタの男性は女の子にもなれるので、いいと思う。お風呂上がりの着ぐるみさんを観察することはできないが*4。その代わりに、お風呂場で「ああ、さっきまで女の子の格好していた人が、一緒のお風呂に入っているんだなあ」と身体のラインをまじまじと観察するといいと思う。

*1:残念なことに、2017年の梅小路公園の日は、天気が雨で、ほとんど人がいない中、やや寂しいロケとなった。

*2:あまりの眠さに、眠気覚ましと称して寝ぼけたままブラックコーヒーを一気に飲み干し、ロケ途中でトイレのために僕だけ早上がりで退散という情けない一幕もあった。

*3:とはいうものの、着ぐるみの"背徳性"に惹かれた人間でもある僕としては、その感覚も分からんではない。

*4:僕の師匠は着ぐるみで風呂に入ったことがあるけどな! ガチャピンだから。