食堂

 小学校の頃は、食堂というのはありませんでした。当たり前です。給食がありましたから。給食、わりと好きだった記憶があります。結構美味しかったと思います。
 中学校もまた、食堂はありませんでした。ただ、大阪府の場合、弁当持参でしたので、親が弁当を作れない場合は、購買でパンが買えましたのでそれを食べていました。確かパンの業者は曜日によって異なり、火曜日と金曜日が美味しい方、月・水・木があまり美味しくないパンだったと思います。

 高校の食堂は、それだけでもう青春の一ページを飾ると言っても過言ではなかったと思います。高校も基本は弁当でした。高校二年から三年にかけては、弁当を持参した日は、天文部のメンバーと文芸及び漫研部のメンバーで、多目的室(空き教室)を占拠して 10 人くらいで食べていました。弁当を持参しない日は、たいてい(・x・)*1 を誘って食堂に行っていました。高校の食堂は、結構クオリティが高く、もちろんめちゃくちゃ美味しいというものではありませんでしたが、学生食堂の最高峰といったメニュー・味・量でした。中でも、味噌カツ丼は至高で、マヨネーズ系のドレッシングが合えられたキャベツの上に薄いとんかつが敷かれ、上に味噌が申し訳程度に塗られた味噌カツ丼は、シンプルながらも過不足のない味で、高校時代の僕を太らせるのに貢献していました。文化祭などで今でも二年に一度ほど高校へ行きますが、まるで昨日まで高校生だったかのように、注文口で「みそかつ大*2」と言うのです。変わらないあの味に過ぎ去った年月を顧み、我々は涙を流すのです。さらに、食堂の素晴らしい点は、からあげとポテトのホットスナックが 100 円という格安で売られていたことです。これも僕をデブらせるのに重要な役割を演じていたことは、もはや言うまでもないことでしょう。食堂は、夜 7 時ごろまで営業し、部活が終わった工房どもの小腹を満たすのです。文化部でお腹が空く要素なんて皆無なのにもかかわらず、僕も夕方に食堂に行くのは例外でなく、アイスなんかを注文して、ぶくぶくと太っていくのでした。ただ、高校の食堂も玉に瑕でして、冷房がついていないという重大な欠陥を抱えていました。よって、夏は灼熱地獄。汗をだらだら流しながら、友だちと駄弁るのでしたが、それすらも美化されるのだから、高校時代というのは恐ろしいです。

 大学でも、高校に比肩する食堂がありました。吉田地区には、主な食堂として、吉田食堂、北部食堂、ルネ、中央食堂があります。吉田食堂は、あまり美味しくないにもかかわらず、一回生の授業をする吉田南構内にあるため、大学や大学周辺の地理に明るくない一回生が、まだきらきらした目をしながら入っていく場所であり、ルネや百万遍のその他の飲食店へ彼らが流れるのを留める堰として機能しています。僕が、2回生の頃ヘビーユースしていたのがルネでして、その利用のしやすさのために加湿器*3とよく二人で行っていました。加湿器は性格も悪いし(ワラ、俺の欠点も嫌味たらしくよく分かってるし、お互いに罵り合う、いわば悪友です。そんな悪友とも、三回生になって専攻が変わってから、食堂に一緒に行く機会も減り、僕はもっぱら中央食堂を利用するようになりました。
 桂に行ってからも、ルネの下位互換のようなセレネという食堂があり、そこを利用していました。というより、ほとんどそこしか選択肢がありませんでした。ほぼ毎日研究室のメンバーと一緒に食べていました。決して不味いというわけではないのですが、吉田の至れり尽くせりを知っている京大生の不満を買うには十分という感じでした。特に丼ものは悲惨を極めるもので、わざとやっているのじゃないかと思うほど、写真と見た目が違うマクドのような貧相なものを提供し続けていました。

 今は社会人になってしまい、社員食堂すなわち社食を利用しているのですが、これがもう惨憺たるもので、値段は 300 円と安価なのですが、「安かろう悪かろう」を地で行くような見た目と味と量です。確かに、栄養面では副菜が充実していて、その点は評価に値するのですが、主菜は冷めてカピカピになっていて、せいぜい豪勢な残飯というような見た目でして、量は肉が三切れという戦時中のような少なさです。新入社員一同、これはギャグなのかな? というようなみじめな食堂を見させられたあと、社員が誰一人この陰惨な食堂に文句を言っていないという現状を見て驚嘆し、社会で働くことの洗礼を受けた次第であります。やはり、働いているうちに徐々に諦めと洗脳が入ってきて、これでいいやと思うようになるのでしょう。端的に言って、舌が馬鹿になっているのだと思います。これでは士気も上がりません。会社というのは刑務所であるという現実を突きつけられたのでした。

 まあ、住んでる場所が長瀬ですからね。夜は近大近くの飯屋を開拓すればいいんですよ。ただ、ラーメン屋以外がちょっと貧弱なんですよね。なお食費。

*1:高校の友人。男。留学していたため留年し、ドイツから帰ってきた二年の夏から同じクラスになった。

*2:大サイズと中サイズがある。

*3:大学の同じ学科の友人。